古民家再生のススメ
日本は良質の木材に恵まれその使用に適しており、数百年の寿命を持つといわれる木材の性質や美しさを見極め、神経の細やかさともあいまって、長い歴史の中で和風の伝統構法が培われました。柱、梁は構造的な骨格であると同時にそれ自身が意匠美でもあり、真壁工法は木材を良好に乾燥させて長持ちさせ、それが日本建築の特徴であり世界に誇れる木造技術にもなっています。
古民家は生活や行祭事・礼儀作法に密接に結びつき、一見無駄にみえる部分や陰翳のなかに神秘的で精神性豊かな日本の文化を醸し出してきました。
使いやすく丈夫で造りやすい古民家は、それぞれの地域の気候風土において自然と調和した美しさを磨いてきました。長い時をかけ完成度を高めた地域性豊かな古民家は、まさに日本人が創造した「日本の住文化」の傑作であり、「地域の証明書」であると言えます。千数百年の昔より連綿と受け継がれ、我が国の気候風土と融合調和して発達を遂げてきた古民家は、日本が世界に誇れる技術の一つであり、日本人の魂の拠り所でもあります。
だからこそ古民家は百年以上親しまれ、思い出や歴史を重ねて生き長らえてきたのです。
日本の近代化は明治以来、西欧の近代技術や思想によって推し進められてきました。特に戦後アメリカ流の機能主義(効率化)によって日本の住宅はすっかり変わり、かつての暗さ、不便さは解消され明るく便利になりました。同時に今の時代においは、効率的に意味がなく無駄と思われるものは捨て去られることが多くなってきました。
その反面、今日の住まいが商品化・消耗化して画一的な単なる「モノ」となってしまい、二、三十年でその役目に合わなくなると取り壊されています。このことは新しいものに進歩発展を求め効率化することと、精神のよりどころとなる文化面との両立がなされていないからではないでしょうか。
そして今日の急激な経済・社会構造、生活様式の変化により、老朽化してさまざまな不具合が生じた古民家が数多く取り壊されています。
このような行き詰まりのなか、新しいものへの評価だけでなく、古くても本当に良いものを再評価し地域文化を見直す動きが強まっています。また環境問題への意識が高まり、再生リサイクルの時代となりつつあります。
こうしたなかで、今日的テーマとして日本の古民家の良さを再認識し、各地で「古民家再生」の動きがあります。かなりローコストで再生でき、さらに百年の寿命を吹き込まれていることは注目に値します。
このような背景のもと、「古民家再生」を社会啓発し、古民家から先人の知恵を学び、その伝統構法の伝承と日本文化の再認識をしながら、再生及び新築においても百年受け継がれる「現代の民家造り」を創造しなければならないと考えます。